私の以前ブログで『入りやすい旧帝大』として九州大学の理学部生物学科を取り上げました。(やや誤解を招く表現ですが、『旧帝大の中では比較的入りやすい』という意味です。)
あれから2年ほど経ちましたが、2020年現在の九大理学部生物学科の難易度はどのようになっているでしょうか?2018年度、2019年度のデータから最新の情報を追いたいと思います。
Contents
①理学部生物学科は難易度が上がったか?
2015-2017年度当時の状況振り返り
まずは復習として過去のデータを振り返ります。
学科 | 2015年度 最低点_得点率(%) |
2016年度 最低点_得点率(%) |
2017年度 最低点_得点率(%) |
物理学科 | 60.8 | 63.5 | 65.4 |
化学科 | 61.2 | 62.1 | 63.4 |
地球惑星学科 | 59.3 | 62.1 | 63.1 |
数学科 | 62.8 | 63.3 | 66.4 |
生物学科 | 59.0 | 60.7 | 61.5 |
上記記事で分析の通り、当時の九大理学部生物学科は九大理学部内で比較しても分かる通り、例年最低点が低い状況でした。
そのため、ブログ記事で(やや誤解を生む表現では有りますが)『入りやすい旧帝大』として紹介しました。
2018-2019年度の状況(最新)
では現在はどうなのか?最新の情報を検証しました。
偏差値
偏差値としては理学部生物学科は理学部内では2番手で、芸工や農学部よりも上です。
医学部医学科 70.4 薬学部 臨床 65.9 薬学部 創薬 64.1 工学部 機航 63.6 工学部 電情 63.0 理学部 数学 62.1 歯学部 62.0 工学部 物質 61.8 工学部 建築 61.7 工学部 エネ 61.6 工学部 地環 61.4 理学部 物理 61.2 理学部 生物 61.2 理学部 化学 61.1 芸工 音響設計 60.8 芸工 芸情設計 60.8 農学部 60.3 医学部生命科学 60.2 芸工 環境設計 60.0 理学部 地惑 59.8 |
なので、理学部生物学科は『合格者平均』はそれなりに優秀であることが分かります。
しかし、後述のように『合格最低点』は最も低い水準となっています。
合格最低点
ここで、理学部における合格最低得点率を比較すると下の表のようになります。
(合格のしやすさは当然のことながら合格最低点(得点率)によって決まります。)
学科 | 2018年度 最低点_得点率(%) |
2019年度 最低点_得点率(%) |
物理学科 | 61.7 | 61.2 |
化学科 | 58.9 | 62.2 |
地球惑星学科 | 58.1 | 60.8 |
数学科 | 56.9 | 60.8 |
生物学科 | 56.5 | 59.9 |
その結果、最新のデータにおいても生物学科が一番入りやすいという状況は依然として続いている結果が得られました。
確かに上述のように、合格者平均偏差値(全統模試)の結果は化学科より上がっていますが、最低点はやはり依然として生物学科です。
入試の合格しやすさは合格者平均ではなく、最低点によって決まるのは言うまでもありません。
なのでやはり品がなくやや誤解を招く言い方では有りますが、理学部生物学科は『入りやすい』と述べても間違いではないと思われます。
②私の記事のせいで難易度が上がったのか??
とある読者の一人から、『私が記事を書いたせいで九大理学部生物学科に目をつける人が増えて難化した』という趣旨の興味深いご意見を頂きましたので、それについて検討します。
確かに、2019年度は理学部生物学科の得点率はトップの化学科と比較し2.3ポイントしか変わらないので若干の難易度上昇は見えます。
しかし、繰り返しになりますが、理学部内での比較で合格最低点が1番低いのは依然と同様で変わりないですし、得点率上昇もそれ程大きなものでもありません。
仮に最低点が誤差以上に上昇していたとしても、その全てを『私のサイトを見た受験生が生物学科に集まったから』と言う理屈で片づけるのは強引だと思います。
例えば入試難易度を決める要因としては、社会的要因があります。近年は生物系出身者の活躍が目覚ましいですし(IPS細胞など)、微生物を使った培養技術など生物学系のスキルが今まで以上に求められています。生物学科の難易度が上昇したのだとすると、そういった背景も1つ考えられます。
③他学部との比較はどうか?
工学部、芸術工学部、農学部との最新の結果比較ですが、やはり生物学科が一番低いです。
学部(学科) | 2018年度 最低得点率(%) |
2019年度 最低得点率(%) |
理学部(生物学科) | 56.5 | 59.9 |
工学部 | 60.5 | 61.9 |
芸術工学部 | 58.5 | 60.7 |
農学部 | 57.5 | 61.1 |
ちなみに2018年度の工学部最低得点率は地球環境学科で、2019年度は地球環境学科とエネルギー学科が同率です。
芸術工学部は2018年度の最低得点率は工業学科で、2019年度は情報学科です。
農学部は学部全体で募集になります。
なぜ『偏差値』は高く『合格最低点』は低いのか?
なぜ九大理学部生物学科は偏差値と合格最低点の逆転現象が現れているのでしょうか。
恐らく、全統記述の時点で理学部生物学科を志望するような層は”モチベーションの高い層“であり、学力的にも優秀な割合が多いのだと思います。
その一方で、生物学科の定員(46名(内AO5名))がその優秀層の人数よりも余裕が有り、それまで生物学科を志望していなかった”モチベーションが高くない層”まで合格させてしまうためであると考えられます。
またそもそも偏差値と入試難易度についても完全に一致しないというのが私の前々からの主張ですので、それが証明されているだけに過ぎないのですが。
まとめ
最新のデータと照らし合わせて検証しても、九大理学部生物学科は現在も入りやすい旧帝大であると考えられます。
確かに九州大学理学部生物学科は合格者偏差値としては高い結果が得られています。
そのため、優秀層の割合は相対的に他の学科よりも高い可能性があります。
しかし入試の入りやすさは偏差値で決まるわけでは無く、『合格最低点』で決まります。
その合格最低点(得点率)に関しては、依然として九大理系内で最も低い水準にあり、かつ単年だけでなくここ5年ほど同じような傾向が得られているので再現性があります。
そのため、確かに誤解を招きやすい表現かもしれませんが九大理学部生物学科『入りやすい旧帝大』であると言って問題ないと、当サイトとしては認識しています。
(来年もこの傾向が100%続くとは保証しませんが。)
今後ネットに無料公開するのがまずい場合は、有料での提供にして範囲を限定する可能性もあります。