志望校別対策

【予備校講評】名古屋大化学(2018年度)の難易度評価を比較(3大予備校)

2018年度、名古屋大化学の予備校評価を比較しました。
各社がどのように難易度等を評価したのか、じっくり読んでみるのも志望校対策に有効です。

参考) 河合/駿台/代ゼミの各HP

Contents

出題内容

2018年度名大化学の出題内容です。

(テーマ)2018年度名大化学

名大化学は例年、理論・無機・有機が満遍なく出題され、理論(無機の融合問題などを含む)が3題、有機2題(うち1題が高分子)という構成になっている。
今年も例年通りの出題の仕方となりました。

難易度評価

3大予備校が評価した難易度を表にまとめます。

(難易度)2018年度名大化学
各社で分量に対する評価が分かれました。
しかし全体的な難易度は概ね難化気味であると分析されています。

各大問に対する評価

大問【1】

河合塾

周期表と周期律、電気陰性度の大きさと結合の極性イオン結晶が固体状態では電気を導かない理由(25字)
四塩化炭素分子が無極性分子となる理由(40字)

駿台

設問(4)では、与えられた式に具体値を代入するだけで算出できるが、計算量が非常に多く、かなりの時間が必要であった。

代ゼミ

イオン結晶が導電性をもたない理由を論ずる設問3や四塩化炭素が無極性分子であることを論ずる設問5は平易。
設問4は(ⅰ)で求めた各ハロゲン化水素の生成熱を(ⅱ)に利用する。
その方針を与式からくみ取ることが出来るかを試す良問。
定年にやり過ぎてしまい、過度に時間をかけてしまった受験生が多いと予想される第1問えあった。
スピーディーに処理したい。
計算1問, 空所補充1問, 論述2問, その他1問。

大問【2】

河合塾

ブレンステッド・ローリーの定義、電離平衡
過酸化水素の分解に関する反応速度と半減期の計算

駿台

《1》
誤りである理由を記すのだから、具体的にその例をあげればわかりやすい。(c)では、酸と水とで水素イオンの授受を表す電離式を、(f)では電離定数はk1/k2で表されることを書くとよい。
《2》
設問(3)、(4)は、ともに1次反応の半減期を求める問題である。両者が同じである点に気づけばすぐに解けたであろう。設問(5)は、具体的にn=1,2,3などで算出して考えるとわかりやすい。

代ゼミ

問1はブレンステッド・ローリーの酸塩基を中心とした正誤問題。
誤文のみその根拠を論ずる形式で内容は比較的平易。
本学頻出の反応速度を扱った問2は差がつきやすい構成。
半減期が初濃度に左右されないことが分かれば(4)は計算問題ではない。
初項と公比から公式でn項までの和を求めるだけの(5)はそれほど難問ではない。
正誤1問, 計算3問, 空所補充1問, その他1問

大問【3】

河合塾

環境に有害な無機化合物に関する問題水酸化カドミウムCd(OH)2の溶解度積、グラフ描図Pb2+を含む金属イオンの定性分析、反応熱計算

駿台

設問(2)のグラフを記す場合、pH6、9.2、12の3点があればよいだろう。設問(3)沈殿AがAgClとPbCl2の混合物であることに気付くと簡単に解ける。

代ゼミ

上位校では近年頻出である溶解度積の両対数グラフを作図する形式で出題した設問2(ⅱ)が難しい。
文中の沈殿生成量から計算するカドミウムイオンの初濃度が必要。
その他の設問は平易なので完答したい。
昨年の第3問と比較するとかなり難しい。
計算2問, 空所補充1問, 反応式1問, その他1問

大問【4】

河合塾

アセチレンの製法と反応性、各種化合物の構造決定アセタール化による生成物C9H10O2の構造決定
合成高分子化合物の製法と構造に関する正誤問題

駿台

アセチレンからの合成に関する問題で、ビニロン、
ポリクロロプレン、ベンゼンなどが出題された。
設問(4)のアセタール化された構造式はビニロンの合成過程の理解力が試された。

代ゼミ

エステル化で生成するエステル結合の酸素原子の一方はアルコール由来である、ということを解答する設問3のHは、その題意を読み取るのがやや難しい。
ベンズアルデヒドとエチレングリコールのアセタール化生成物を解答する設問4は題意をしっかり読むことで正解を作ることが出来る良問。
2つのヒドロキシ基と明記されていることに注意したい。
第4問も昨年と比較するとやや難しい。
構造式2問, 正誤1問, 反応式1問, 空所補充1問

大問【5】

河合塾

グルコースの構造、二糖類の構造と性質
トレハロースが還元性を示さない理由
グルコースからなる二糖およびジペプチドの異性体の数

駿台

設問(4)の論述は、与えられた語句をつないでいけば文は書けるであろう。
設問(5)の異性体数は、グリコシド結合をしていないC1のα型とβ型を区別しない点に注意すること。
設問(7)の異性体数は、側鎖の官能基アミド結合に使える点とアスパラギン酸とリシンの順列を考える点に気づく必要があった。

代ゼミ

第5問が設問ごとの比較では最も難化した印象。
2分子のグルコースの縮合生成物の数を数える設問5が印象的。
1位をグリコシド結合に使ったかどうかでカウント方法を区別する必要があり、数え上げで解答するのが自然。計算でパッと求めるとミスしやすい。
アスパラギン酸とリシンの縮合のパターンを数える設問7も同様。
この2題と論述の設問4で差がつく。
構造式2問, 空所補充1問, 異性体2問, その他1問。




各社の総合的な評価(抜粋)

河合塾

昨年に比べて明らかに難化した。
問題Iの設問
(4):結合エネルギーから電気陰性度の大きさを判断する問題、問題IIの問2:過酸化水素の分解反応の半減期にまつわる各種計算問題、問題IIIの設問(2):水酸化カドミウムCd(OH)2の溶解度積に関する計算問題とグラフを描く問題など、非常に難しい問題がみられた。かなり綿密に発展演習を重ねてきた受験生でないとこれらの問題には手がつけられなかったのではないだろうか。

駿台

大問5問で、理論・無機・有機からバランス良く出題されている点や計算問題や論述問題の難易度も昨年とほぼ同じであった。ただ、分量は昨年度の問題I、II、IIIが各々問1、問2に分かれていたのに対し、今年度は問題IIだけが問1、問2に分かれており、全体として少し減少した。
問題IIIの設問(2)は、計算量が多く、その上で図を描く問題でかなり難しかったであろう。問題Vの設問(5)は、1997年度に類似の出題があった。

代ゼミ

15年度以降、若干易しくなっている印象だが、本年は14年以前を彷彿させる設問が散見。
その他は比較的平易であるが、トータルでは昨年よりやや難化か。
作者の意図を考える問題、数学的センスを活用する問題などの良問が増加。
昨年は1題だった論述問題が5題に増加。
昨年に引き続き計算問題は多く、何度の高かった14年度以前への回帰を予想させる。
近年のものだけでなく、より難しかった年度のものにも挑戦し万全を期すべきであろう。
ただ軽い設問も多い。

管理人の感想

見慣れない計算問題やグラフ問題が難しい印象。