東京医科大で女子受験生が不当に操作をされて合格を取り消されていた問題は世間を騒がせました。
平等の観点から女子だからといって合格を取り消すようなことはあってはならないことで、私も憤慨しました。
しかし、実はこの”女子受験生の冷遇問題“には、医療をとりまく難しい事情が潜んでいるようです。
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上がってきた女性医師の割合
医師における女性の割合が近年かなり上昇しています。
特に若年層に顕著で、1980年には20代の女性医師は12.7%であったのに対して、2008年には36.2%まで上がりました。
(出典:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」)
本来、これは男女平等の観点などから、良いことと捉えるべきですが、実はこの『女性医師の増加』が、現場で様々な問題を引き起こしています。
女性医師が増えたことによる問題
キツい診療科を女性医師が敬遠する問題
問題のひとつ目が、女子医学生は、診療科選択の際、外科などの体力的なタフさが要求される診療科で働くことを敬遠する傾向にあると言います。
実際、外科における女性医師の割合は7%ほどで、比較的負担が軽いとされる『眼科』『皮膚科』などの診療科は女性医師の割合が40%弱にも上ります。
加えて、2007年のデータでは、34歳以下の若年層の場合、皮膚科の61.0%、眼科医の44.6%が女性医師という結果になっており、逆に外科医などのハードな科はそのあおりを受けて深刻な医師不足の状態になっています。
(プレジデントFamily 2019年度)
結婚・出産を機に離職してしまう問題
加えて、女性は特に出産を機に離職してしまう問題があります。
例えば小児科医の場合、47%の女性医師が離職経験があるという結果が得られています。(日本小児科学会2004)
大学が医師一人を育て上げるのに、膨大な費用と労力を掛けています。
その医師にやめられてしまうことは、その分の費用を回収できないことを意味します。
また、抜けた穴を補わないといけないため、残る医師達に掛かる負担は大きくなります。
女性医師の労働時間が短い問題
また、女性医師は男性医師と比較し、労働時間が明らかに短いです。
そのため、男性医師が女性医師の労働力をカバーしているという実態があります。
では女子生徒は入試で冷遇されるべきか?
これは絶対に『No!』です。
受験生は人生を賭けて努力しています。
その思いを踏みにじるような行為は、絶対に避けるべきです。
そんなことをするぐらいなら、最初から『女子受験生は20%以上採りません』などと明言しておくべきです。
それなら、その情報をもとに受験生が判断して大学を選ぶことが出来ます。
恐らく、東京医大の他にも、似たようなことを行っている大学はあると思います。
例えば、同じ私大で、東京医大よりよっぽど男子割合が大きい大学がいくつかあります。
ではどうすればいいか?
まず必要なのは、女性医師がはたらきやすいよう社会が支援することです。
ただし、恐らくですが仮に女性医師の労働環境が改善したとしても、女性医師の早期退職やハードな科を選ばない傾向は、それほど大きくは改善しないのではないかと思います。
実際、医師は民間企業などと比べて、比較的女性へのサポートが整っている職業です。
にも関わらず、多くの女性医師が主産などを機に離職してしまいます。
私も解決方法は簡単には出せませんが、状況が酷くなるようなら、男性8割/女性2割など男女比を固定してしまうといった措置も必要と思います。
東京医大のように、黙ってやるのは許されません。
こんな解決策はダメ
「女性医師が辞めてしまうのなら、それを見越して医学部の定員を増加すればいいんじゃね?」と考える人がいるかもしれません。しかしそれは許されません。
理由は、医師一人育てるのに、莫大な費用がかかるためです。
加えて、教育に時間をさける現場のキャパや人的資源にも限界があります。
なので、その方法はナシです。
感想
民間にも言えることですが、女性の離職問題は社会が解決しなけばいけない問題です。
イギリスやフランスなど、女性の社会進出が進み、医師の割合も50%に迫る欧米などを参考に、手を打って行く必要があるかなと思います。
個人的に最も重要だと思うことは、女性でも男性でもいいので、優秀で責任感の有る医師が増えて欲しいということです。以上。